カワウソのしっぽの研究

自己紹介

こんにちは,日本アジアカワウソ保全協会事務員の小口と申します. 協会における技術要員で,ウェブサイトの保守管理を主に担当しています. 技術者としては aiotter というハンドルネームで活動していて,動植物の情報を検索できる いきものサーチというウェブサービスを公開していたりします.

いきものサーチでラッコを検索したところ.生息域を表した地図,行われている保全活動や寿命などの情報が表示される

私は現在京都大学の理学研究科で生物学(主に形態学,系統分類学)を専攻している修士 1 年の学生ですが,学部では化学を専攻していました. 大学に入ってから生物学に興味を持ち,趣味で関東・関西を中心に動物園を巡って色々な動物を観察し,写真に撮るようになりました. (余談ですが,私は PENTAX の KP という一眼レフを使っています.小型で防滴仕様であり,暗所に強いですが,素早く動くものを撮るのが苦手なので苦労しています)

特にカワウソの水中での動きや,捕食行動,興味の向く先を見るのが好きで,動物園でもカワウソ舎の前で長い時間を過ごすことが多くなったり,シンガポールの都市で生活する野生のカワウソを観察しに行ったりするようになり,もっと専門的にカワウソのことを知りたいと思うようになって,現在の研究分野に入りました. 私は生物をずっと専攻してきたわけではないので,生物学の知識が不足していて苦労することも多いですが,代わりに化学の視点からなにか新しい気付きが得られればと思っています.

以前からコツメカワウソの密輸入など日本国内での問題をなんとかできないかと考えていたところ,中国の唐家河で 1 週間ほどかけて開催された カワウソ国際会議に単身参加した際に,カワウソの保全協会を設立しようというお話を聞き,学生の身ではありますが当協会に加入しました. カワウソの保全に微力ながら協力できればと思います.

シンガポールの都市に生息する野生のビロードカワウソ.釣りが禁止された広い川で大きな魚を捕って餌としている.シンガポールでは他にも北部の島にコツメカワウソが生息している

研究テーマの紹介

私の研究テーマについてご紹介させていただきます.

カワウソの泳ぎ方を見ると,手足を使って水をかく泳ぎ方の他に,特に素早く加速する際,図 1 のように,尾と身体を一緒に動かしてうねるように泳ぐ姿が観察できます. ここで尾は推進力を得るために使われていると考えられています.

図1. カワウソの水泳時の 1 回のストロークにおける動き (F. E. Fish 1994 より)

この行動は,イタチ科のなかでも長時間を水中で活動するカワウソ類に特有のものであると考えられます. カワウソは他のイタチ科と比較して平べったい尾を持っていて,これも水中での行動に適応した結果ではないかと考えられます. カワウソは水中の行動に特化した骨格や筋肉を持っていると考えられ,私は特に尾に着目してそのような特徴を見つけるために,イタチ科のなかで尾の形態を比較する研究を始めました.

今までのところは,カワウソ以外のイタチ科を解剖して,尾の筋肉の発達や位置を調べています. 例えば車に轢かれたテンの死体を解剖し,テンの尾の筋肉について調査しました. 他にイタチ属についても同様の調査を行い,テンやカワウソとの間で比較を行う予定です.

また今後研究成果を報告させていただければと思います!

参考文献

  • Fish, F. E. “Association of Propulsive Swimming Mode with Behavior in River Otters (Lutra Canadensis).” Journal of Mammalogy 75, no. 4 (November 18, 1994): 989–97. https://doi.org/10.2307/1382481.
小口祐斗
小口祐斗
事務局員

学部生